と言う事で一時的に撤去しました。
なぜ自動配信広告とアクセス解析を撤去したか
今回の高等裁判所での coinhive 事件の逆転有罪判決では、
利用者の意図に反して利用者のコンピューターリソースを利用し、 (WebSite を)収益化することを目的として、 利用者が拒否できない構造のプログラムを提供すること
が、コンピューターウィルスの提供・保持に当たると言う判決でした。
もっともこれは coinhive の性質を持ってしてそう言う判決が出たんだと思いますが、 この判決を抽象化し、かつ他の Web 技術にも適用されることを考えると、
- 利用者が拒否できない広告の自動的な配信
- 利用者が拒否できないアクセスの解析
と言う機能を Web サイト上で実装することは、
(同意なしに)クライアントサイドで行うとすべてウィルス提供・所持罪
ということになり得ます。
そのためその手のことをサーバサイドだけで調整しなければならなくなったので、 その対応が出来るまで一時的に撤去することを決めました。最悪ですね。
coinhive 事件の高裁判決は何が問題か
一言で言えば、件の高裁判決は、
利用者に無断で動的広告を配信したりアクセス解析した ら ウィルス所持・提供罪 な
と言っているに等しく、つまりは、
アドテク業界とアクセスアナリシス業界は滅べ
と言っていることになります。
また 日本の警察は無限ループ処理でもコンピューターウィルスだとして立件している ことも加味し、 かつ、これがもっと非道くなると想定した場合、
- JavaScript の利用 は 基本的にはウィルス所持・提供罪
- DoS 攻撃や Web Service の Glitch が可能な CSS もウィルス
- または iPhone や iPad を一時期再起不能にした Unicode の利用もウィルス
と言う事になりかねず、
日本に在住している限り、Web 技術の利用は基本的に違法になる
と言う未来も見えても来ます。
とは言え この手の取締り側はここまで考えていない でしょうね。
coinhive 事件の転び方によっては日本では IT 開発自体が法的リスクになる
そもそも最初に書いた高裁判決の、
利用者の意図に反して利用者のコンピューターリソースを利用し、 (WebSite を)収益化することを目的として、 利用者が拒否できない構造のプログラムを提供すること
と言う解釈は、別に Web 技術だけに限定されることでもなく 、 例えば 不可解な動作をするアンチウィルスソフトウェア や、 そもそもソフトウェアを動かす OS である Windows や macOS などの不可解な挙動 、 更にはもっと低レイヤーの UEFI/BIOS と言ったレベル でも、 その不信な挙動が収益化を目的としている のならば、
利用者の意図に反して 利用者のコンピューターリソースを利用 し、 収益化することを目的 として、 **利用者が拒否できない構造のプログラム** を 提供する こと
と言う図式が成り立ちます。
つまり今回の coinhive 事件の高裁判決がそのまま確定判決となり、 また類似判決が積み重なるようなことなれば、
日本での IT ソフトウェア開発は、常に法的リスクを犯している状態 になる
と言う結論にならざるを得ません。
またこれらのことで、他国の企業が日本市場への参入を検討するなどの場面において、
日本で IT 関連事業を行うのはリーガルリスクが高い
と判断され日本への参入を見送られたとすれば、それは 、
他国の優れた IT 技術が日本だけ利用できない
と言う事態にもなりかねないと考えられます。
そしてこれらは 一番最悪のパターンではこうなる と言う話ではあるんですが、 このまま不可解な判例、または不条理な逮捕・起訴が積み重なって行けば、 自然とこう言った方向に近付いて行き、最終的には 日本では誰も IT 技術者を目指せなくなる か、 あるいは IT 技術者を目指す人も自然消滅して居なくなって行く と思います。
以上
この手の話で毎回思うことなんですが、今の日本ではプログラミング教育が始まりつつあり、 仮にこう言ったプログラミング教育を国を上げてやって行ったとしても、 今回の件の様なプログラムに対する事件・判決が積み重なって行けば、 自然とその意味が無くなって行きます。
そしてそれどころか、こう言ったソフトウェアの実装自体がグレーゾーンな領域で、 IT 技術全般に過大な制約を課すような事が続けば、未だこの手の理解が浅い世間一般において、
**プログラミング教育は、未来の犯罪者を生み出す教育だ**
と言われる事にもなりかねないし、またそう言う主張する勢力も出てくると考えています。
そのため今回の coinhive 事件の様な、 IT 技術の活用に不条理や過大な制約を課す様な摘発・判決は勘弁してくれ と私は思っています。はい。