始めに
※この記事は2024年9月17日に内容を大幅に改訂しました。
この記事ではハイレゾストリーミングサービスをビットパーフェクトで聴く方法を記載しています。
この記事で確認した各社ハイレゾストリーミングサービスの挙動確認は、2023年5月24日時点のもので、 それ以降では状況が変わっている可能性があります。
またこの記事を公開した当初、e-onkyoがQobuzに統合され、その後の情勢が変わってくる、 と記載していましたが、日本版Qobuzが2024年9月時点でも未だサービスが開始されていないため、 本記事では、
と、
の二大サービスについて取り上げます。
なお日本では正式にサービスを開始していないTidalや、CD音質の楽曲しかないDeezerについては特に取り上げません。
最初に結論
結論を先に述べると、
- Apple MusicはApple製品とDACを用意すればビットパーフェクト再生が可能
- Amazon Music Unlimitedのビットパーフェクト再生はごく限られた条件のみ可
という状況です。
Apple Musicをビットパーフェクトで再生する方法
まずApple Musicのビットパーフェクト再生をしたい場合、 iPhoneやiPadといったモバイルデバイスを利用する時と、 macOS搭載のコンピューターデバイスを利用する場合では条件が異なります。
iPhoneやiPadなどのモバイルデバイスで再生する場合
iPhoneやiPadなどのモバイルデバイスでApple Musicをビットパーフェクト再生したい場合、 Apple MusicアプリでLossless再生を有効にし、CoreAudioという規格に対応したDACを接続すれば、 ビットパーフェクト再生ができるようになります:
この際、製品を選ぶコツとしては、
- 端末との接続ケーブルが脱着可能な物を選ぶ
- 音量コントロールがハードウェア側で出来るものを選ぶ
- Nintendo Switchなど他の機器に対応しているかを調べる
と言った辺りです。
まず個人的な経験から言うと、上記の(1)と(2)は必須です。
今現在、CoreAudioに対応したモバイルDACでは、ケーブル本体とオーディオ端子が直結された物も存在します。 しかしこれらの製品はケーブルが断線した場合、修理が出来ず、買い換えるしか方法が無いため個人的にはおすすめしません。
また今のiPhoneやiPadでは、
- Lightningケーブルの接続を前提とするもの
- USB Type-Cとの接続を前提とするもの
の二種が混交している状況で、中古で購入できるiPhoneやiPadなどの場合、 Lightning接続の物とUSB Type-C接続の物の両者が流通しています。
そのため、仮に中古のiPhoneなどを購入し、Apple Music用の音楽プレイヤーとして利用する場合、 LightningケーブルやUSB Type-Cケーブルの取り回しの点から、 モバイルDAC本体からもケーブルが脱着できる物のほうが好ましい、と考えています。
次に(2)について、これは接続する機器にもよりますが、ハードウェア側で音量調整が出来ないと、状況により、爆音が鳴ります。
USB Type-C接続のモバイルDACは、パソコンやAndroid端末でもそのまま流用できるため非常に便利なのですが、 プレイヤーや機器によっては、モバイルDACの音量調整も出来ず、爆音が鳴って実用出来ない、という場面に出会す時があります。
私も過去に(今は断線のため破棄した)ケーブル直結型のモバイルDACを所持していたのですが、 特定の機器と接続した際に爆音が鳴り、かつ音量も下げられないと言う状況となった事もあるため、 ハードウェア音量調整はあったほうが良いと思います。
ただハードウェア音量調整の場合、ボタン式の物がほとんどだと思いますが、 モバイルDACなどのボタンは長く使っていると摩耗し、 スイッチとして機能しなくなる事もあるため、耐久性については留意しておく必要があります。
なお最後の(3)についてはおまけみたいな物で、例えばNintendo SwitchではUSB Audio Class 1.0接続のDACしか認識しません。 そのため、Nintendo SwitchでモバイルDACを利用する場合、Nintendo Switch対応の機器を選ぶ必要があります。
macOS搭載のコンピューターで再生する場合
macOSでApple Musicをビットパーフェクト再生する場合、若干ややこしいらしいので、 まずはその点から解説したいと思います。
用意すべきもの
まずmacOS搭載コンピューターで必要になる機材は、いわゆるオーディオインターフェースか、もしくは再生専用のヘッドフォンアンプです。
オーディオインターフェースは主に音楽製作に使われる機材ですが、用途はそれに限らず、 スピーカーとコンピューターを接続したり、もしくはマイクを接続してテレカン用に使う、 といったこともできます。
ヘッドホンアンプに関しては、大きく分けると据置きのものと持ち運び可能(いわゆるポタアン)なものがありますが、 これはmacOSコンピューターがデスクトップかノートかで買い分けると良いかと思います。
なおこの際の注意点として、接続する再生デバイスはCoreAudio規格に対応する必要があり、 これに対応していないと、おそらくビットパーフェクトでの再生は出来ません。
またオーディオインターフェースやヘッドフォンアンプにしても、いかんせん種類が多くて選び切れないので、 この記事ではAmazon.co.jpでの検索結果をリンクとして掲載するに留めておきます。
macOS側での対応
私は2024年9月現在、macOS機器を所持していないので情報の確度は低いのですが、 macOSでApple Music Losslessを再生する場合、どうもビットレートは自動で切り替わらないらしく、 下記のソフトウェアを利用する必要があるようです:
リンク先は英語なので戸惑うかもしれませんが、
Releases · vincentneo/LosslessSwitcher
からアプリ本体を取得できます。
ただ繰り返しとなりますが、私は現状macOS機器を所持していないため、 macOS側でのビットパーフェクト再生については上記ソフトウェアが必要、 という点のみしか調べ切れませんでした。よってその点はご了承下さい。
Amazon Music Unlimitedをビットパーフェクトで再生する方法
Amazon Music Unlimitedをビットパーフェクト再生する方法は、 実用上、それなり難易度が高いと言わざるを得ません。
と言うのも、私が調べた限りAmazon Music Unlimitedでは、
- WindowsアプリはASIOに対応していない
- モバイルアプリはリサンプリングが必ず発生する
- ビットパーフェクト再生をするためにはS/PDIF接続が必須
という状況にあるため、実用的な環境を揃えるためには、 機材に対し相応のコストを支払う事となります。
なぜこう言った状況になるのか
まずWindowsアプリについて説明すると、Amazon Music UnlimitedのWindowsアプリはASIOに対応しておらず、 ASIOによるオーディオインターフェースなどの動的なサンプリングレート変更が出来ません。
このためWindowsアプリでのビットパーフェクト再生は、 曲のサンプリングレート毎にWindows本体のサウンド再生サンプリングレートを調整する必要があり、 このことから実用性に乏しい状況となっています。
次にモバイルアプリについてですが、私が過去に確認した範囲では、
- iOSやiPadOSのアプリは最大サンプリングレートまでリサンプリングされる
- AndroidではSRC回避やMagiskを使ってもリサンプリングが回避できない
といった点から、Amazon Music Unlimitedでのビットパーフェクト再生は不可能でした。
S/PDIFを使ったビットパーフェクト再生について
これについては私が調査したのではなく、他のブロガーの方が検証した内容なのですが、 下記のブログ記事において、S/PDIF接続が可能な機器を用い、ビットパーフェクト再生が出来た、 との記述がありました:
Amazon Music HD をビットパーフェクトで聴く(機種追加編) - オーディオ 試行記録
詳しい解説は上記記事に譲りますが、上記の方法では下記の機材を用いることによって、 S/PDIF接続時のみ ビットパーフェクト再生が出来るようになったそうです:
とは言え、これは音響環境全体をS/PDIF接続へ対応させる、という事と同義なため、 一から環境を整える場合、それなりに資金が必要だ、と個人的には考えています。
以上
以上が、Apple MusicとAmazon Music Unlimitedでのビットパーフェクト再生手段となります。 今回のリライトでは分量が倍ぐらいとなりましたが、前回の記事と比べ、内容も充実したはず?です。
もし普段使いのスマホがiPhoneであれば、小規模な出費で環境が整いますが、 それ以外の場合、ガッツリとした出資が必要、という点でなんとも言えない感があります。
個人的な話として、私の場合、かつてはAmazon Music Unlimitedを使っていたのですが、 この記事の初版を書いた後で再生環境の変更もあり、今はハイレゾストリーミングを使わず、 ハイレゾ音源を単発購入するスタイルへと変化しています。
そのためハイレゾストリーミングとは縁が遠くなっているのですが、 Qobuzが日本でサービスを開始した後で、また色々と試して調整したいな、と考えています。